260927おひつじ座セイザブーンコラム

【おひつじ座満月コラム】ふたりだけの細道で、命に火をくべる夜

「みんなのいる大通りを抜けてごらん。
君が自分の炎を思い出したとき、世界はそこから新しく始まるんだ☆」

むかしむかし、ある森のはずれで

むかしむかし……といっても、それは昨日の夜かもしれないし、たった今のことかもしれないけれど。
大きな森の中に、たくさんの旅人たちが歩く、広くて平らな大通りがありました。
そこを歩く人たちはみんな、お互いにぶつからないように小さく肩をすぼめて、ペコペコとお辞儀をしながら、同じ速さでゾロゾロと進んでいました。
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「はみ出しちゃいけないよ」「みんなと同じ顔をして笑いなさい」
そんな見えないルールに縛られて、誰もが自分のランタンの灯りをフウと小さく吹き消し、暗がりに目を凝らしながら歩いていたんだ。
旅人の一人だったあなたも、いつの間にか周りに合わせて歩幅をゆるめ、ため息をついて立ち止まりそうになっていた。
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そのとき、森の奥の細い小道から、ガサリと草をかき分ける音がしてね。
「……おいおい、そこの旅人さん。そんなお行儀のいい行列の最後尾で、一体なにを縮こまってるんだい?」
現れたのは、真っ赤なポンチョを羽織って、焚き火の枝をブンブンと振り回している不思議な旅の仕立て屋(私)だった。ニヤリと八重歯を見せて笑う私の背後では、木々の隙間から、まるで夜空を真っ赤に焼き尽くしそうな、ギラギラと輝く大きなおひつじ座の満月が顔を覗かせている。
「おひつじ座の4度って星はね、『ふたりきりの秘密の小道』って意味を持ってるんだ。大通りの連中がなんて言おうと関係ない。君と、君の胸の奥にある『剥き出しの命(エゴの魂)』のふたりだけで、世間の目をぜーんぶ締め出して向き合う夜なんだよ」
私はあなたの手を引いて、森の奥に隠された、湯気の立ち上る小さな泉の前に連れて行った。
「さあ、この泉に『野性の塩』と『3つの秘薬』を投げ込んで、冷え切っちまった心臓にドカンと火をつけ直そうじゃないか☆」

魔法の小袋に入っていた「火の種」たち

私が革袋から取り出したのは、今夜の特製バスソルト「セイザブーン」。
瓶のフタをパカリと開けると、まるでパチパチと焚き火が爆ぜるような、胸がすく匂いが森いっぱいに広がったんだ。
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「いいかい? この黒い粒はね、大地の底のマグマがそのまま固まったブラック岩塩さ。お湯に落とすと、温泉みたいな硫黄の煙が立ち上って、『いい子でいなきゃ』ってこびりついた心の垢を一瞬で燃やし尽くしてくれるベースキャンプだ」
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「そして、この塩の力を極限まで引き上げるのが、今夜のために調合した3つのエッセンスさ」
「まず1つ目は、ブラックペッパー。嗅いだだけで喉と胃の奥がカッと熱くなる、スパイシーな『点火プラグ』だ。『波風を立てたくないな』なんて湿気っちまった心臓に、ピリッと火花を散らして『私が主役だ!』っていう野性のスイッチを強制的にオンにする」
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「2つ目は、この鋭い針葉のようなローズマリー。ツンと頭のてっぺんまで突き抜けるこの香りは、迷いを一刀両断する『銀のナイフ』さ。『他人にどう思われるか』『失敗したらどうしよう』っていう頭の中のうるさいノイズをバッサリ切り落として、進むべき小道をクリアに見据える直感を研ぎ澄ましてくれる」
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「そして最後が、ビターオレンジの葉と枝から搾ったプチグレン。ただ甘いだけの香りと違って、どこか青くてほろ苦いのが特徴さ。このビターな苦味がね、『誰に好かれなくたって、私はこれが好きなんだ!』って胸を張る、気高い反骨精神をくれるんだよ。誰かの顔色を窺うのをやめて、自分の足で大地を踏みしめるための秘薬さ」
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「どうだい? 鼻の奥がツンとして、胸がドクドク脈打ってきただろう? これがね、君が生まれる前から持っていた、混じりっけなしの『魂のガソリン』さ☆」

泉の儀式:心臓のランプに火を灯す

ジャララッ、と黒い塩を泉のお湯へ投げ込むと、シュワシュワと白い泡が弾けて、スパイシーでビターな湯気があなたをふわりと包み込んだ。
ふたりでその温かいお湯にザブンと浸かると、手足の先からジリジリと熱が染み込んできて、凍えていた身体が芯からほどけていく。
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「さあ、息を整えて。目を閉じて、香りに身を委ねてごらん」
  • 【いらない荷物を川へ流す:ローズマリーの風】
    「まずは頭上のモヤモヤに意識を向けて。今日まで大通りで拾い集めてきちゃった『他人のご機嫌』や『嫌われないための愛想笑い』。ローズマリーの鋭い風が、その余計な迷いの鎖をバツンと断ち切ってくれる。ほら、冷たい思考のノイズが、湯気と一緒に森の空へ消えていくよ」
  • 【自立の芯を通す:プチグレンの苦味】
    「深く息を吸い込んで、胸の真ん中にプチグレンのほろ苦い青さを満たしてみて。『みんなと同じじゃなくていい、私は私のままで立つ』。誰の顔色も窺わない、凛とした孤高の覚悟が、背骨の真ん中に一本の硬い樹木のように通っていくのを感じるかい?」
  • 【内なる炎の点火:ブラックペッパーの火花】
    「そして、意識をお腹のいちばん深い場所へ落とすんだ。ブラックペッパーの熱い粒子を吸い込むたび、丹田のあたりに眠っていた真っ赤な火種がパチッと音を立てて爆ぜる。『これが好きだ』『どうしてもこれをやりたい』っていう、理屈じゃない純粋なわがまま。その火種が、ボワッと身体中を駆け巡って、血が沸騰するように熱くなっていくぞ」
  • 【森に響く雄叫び】
    泉からざばりと立ち上がり、夜風を胸いっぱいに吸い込んで、赤く燃える満月に向かってこう呟いてみるんだ。
    『私の歩く道は、ここから私がつくる!』ってね。
「ハハッ! 見違えたよ。さっきまでの迷子みたいな顔はどこへ行ったんだい? 瞳の奥に、本物の野獣の光が宿ったじゃないか!」

誰かのあかりを当てにしなくていい

おひつじ座満月の夜に、月が教えてくれる秘密。
それはね、「誰かに道を照らしてもらおうとするのをやめたとき、自分自身が一番眩しい松明(たいまつ)になる」ということ。
大通りにいる人たちは、きっと「そっちの道は暗いよ」「危ないよ」って引き止めようとするかもしれない。
でもね、先頭を走る者にしか見えない、息をのむような朝焼けの景色が必ずあるんだ。
「いいかい? みんなと仲良く並んで歩くために、自分の火を小さくすり減らすんじゃないよ。君がボウボウと真っ赤な炎を上げて走り出したとき、その眩しさに引き寄せられて、本当に同じ匂いのする仲間たちが後から走ってくるんだからさ」

明日、細道から走り出す君へ

泉からあがったあなたの肌からは、ペッパーの熱気とローズマリーの清冽さ、そしてプチグレンのビターで気高い香りが立ち上り、足元にはしっかりと大地を踏みしめる力が戻っていました。
森の小道の出口で、私はニッと笑ってあなたの背中をバチンと叩く。
「さあ、儀式はおしまい! もう迷うな、振り返るな。君の足で、君の行きたい場所へ、風より速く駆け抜けておいで!」
空を見上げれば、真っ赤なおひつじ座の満月が、まるで「行け!」と背中を押すように、森の小道をカッと白く照らし出している。
誰の指図もいらない。
誰のお伺いも立てなくていい。
明日、あなたが踏み出す一歩から、新しい物語の第1ページがバチバチと音を立てて燃え広がるんだ。
セイザブーンコラム おわり